ステンレス製品は、その輝きと美しさから、キッチンシンク、食器、鍋、洗濯槽、浴槽など、さまざまな場所で広く使用されています。
その耐錆性も魅力の一つです。
しかし、ステンレスも金や白金のような貴金属とは異なり、使い方や環境によっては錆びる可能性があります。
この記事では、ステンレスが錆びる原因、錆の予防方法、そして錆を取り除く方法について詳しく説明します。
ステンレスの錆にくさの理由
ステンレスは、鉄とクロムの合金で構成されています。
クロムは鉄よりも錆びやすく、空気中の酸素と反応して非常に薄い酸化皮膜(不動態皮膜と呼ばれます)を形成します。
この皮膜はステンレスの表面を保護し、錆びにくいという特性をもたらします。
さらに、この皮膜は損傷しても、周囲に酸素が存在すれば瞬時に修復される機能があります。
ステンレスが錆びる原因
ステンレスは錆にくい素材ですが、完全に錆びないわけではありません。
使用環境や使い方によっては、錆びる可能性があることを忘れてはいけません。
塩素イオンによる腐食
ステンレスは錆にくい素材ですが、ハロゲン系イオン、特に塩素イオンを含む環境では、これらのイオンの作用により、ステンレスの不動態皮膜が部分的に破壊され、その部分が錆びやすくなります。
塩の影響
ステンレス製品には、食品調味料である醤油や塩、または汗、海からの潮風から付着する可能性があります。
塩が一度水分を含むと、水溶液として振る舞い、ステンレス表面の不動態皮膜と塩素イオンが反応し、破壊されます。
この自己修復が追いつかないと、錆びてしまいます。
ステンレスは、塩が付着しても、水分が不足している場合には錆びませんが、塩は周囲の湿気を吸収して水溶液に変わる性質(潮解性)を持っているため、付着したままにしておくと、周囲の湿気を吸収し、錆の原因となります。
次亜塩素酸を含む洗剤と漂白剤
次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする塩素系洗浄剤や漂白剤などに含まれる成分、塩素なども、ステンレス表面の不動態皮膜に影響を及ぼし、錆の原因になります。
これに加えて、塩化物などの有害物質や、亜硫酸ガスなどの影響も、ステンレスの錆を引き起こす可能性があります。
異種金属との接触による錆(ガルバニック腐食)
ステンレス製のキッチンシンクの上に、空き缶、鉄くぎ、ヘアピンなどの異なる種類の金属を放置すると、ガルバニック腐食(もらい錆)が発生する可能性があります。
異なる二つの金属が接触すると、その接触部からガルバニック腐食が起こり、ステンレスの表面に錆を形成する原因となります。
もらい錆の仕組み
金属は水溶液中で金属イオンに変化しやすい順に並べたものをイオン化傾向と呼びます。
異なるイオン化傾向を持つ金属が接触すると、イオン化が促進され、錆びやすくなります。
この現象はボルタの電池として知られ、イオン化傾向が高い金属が陽極(アノード)、低い金属が陰極(カソード)となり、電流が流れ、陽極の金属が集中的に腐食し、錆びます。
例えば、ステンレス製のシンクの上に鉄製の釘を置いて、水をかけてしばらく放置すると、釘に沿った赤い錆がシンクの上に形成されることがあります。
鉄とステンレスでは、鉄の方がイオン化が促進されやすいため、鉄の錆が生じ、それがステンレスに付着します。
これがもらい錆の仕組みです。
鉄自体が錆びるだけでなく、ステンレス自体も錆びる可能性があることに注意が必要です。
古い住宅では、水道管が鉄製であることがあり、水道管の錆が原因でシンクが錆びる事例も存在します。
ステンレスの錆予防法
ステンレスと他の金属製品を分離する
ステンレスに錆が発生する主な原因はもらい錆です。
湿度の高い環境でアルミ缶、鉄くず、ヘアピンなどを長時間放置すると、これらの金属が錆びてしまいます。
また、ステンレス製品と直接接触する可能性のある物品(例: シンクの上の水切りカゴ、包丁、鍋など)がステンレスでない場合、錆が発生することがあります。
油や汚れの取り扱いに注意
油や汚れが付着していると、ステンレスは酸素に触れにくくなり、クロムによる不動態皮膜が形成されず、その部分が錆びやすくなります。
使用後は、適切な洗剤を使って油や汚れをしっかり洗い流し、最後に水分を残さないように注意しましょう。
塩素系漂白剤や洗剤の使用を避ける
塩素系漂白剤はステンレスを腐食させる可能性があります。
塩素系洗浄剤や漂白剤は、ステンレス表面の不動態皮膜を損傷し、錆が発生しやすくなります。
もし誤って使用してしまった場合は、すぐに大量の水で洗い流しましょう。
必要があれば、酸素系の洗剤を選びましょう。
錆の取り扱い方法
もし錆が発生した場合は、市販のステンレスクリーナーやクリームクレンザーを使って、スポンジやステンレス製たわしで錆を取り除きましょう。
まとめ
ステンレスは錆にくい素材ですが、万能ではありません。
塩素イオンを含む環境では、その作用によりステンレスの不動態皮膜が一部損傷し、その部分が錆びやすくなります。
また、ステンレス以外の金属と接触させることで、もらい錆が発生し、それがステンレス自体の錆につながる可能性があります。
そのため、ステンレスの錆びを予防するためには、塩素イオンや異なる金属との接触を避け、化学反応を防ぐ注意が必要です。